さて。誤解を恐れずに言うと、CPA Cost Per Acquisition (獲得単価)ばかりに注目した検索連動型広告の利用法は、検索連動型広告の可能性を大きく捻じ曲げている、と以前より思っている。僕自身は広告会社自体も含めて広告とネット業界にどっぷりハマっているわけだが、特に検索連動型広告の業界では、(言い方悪いが)“猫も杓子もROI”な状況、及び、“検索連動型広告中毒患者”を多数見かける。これらがダメ、というわけではないが、購買行動プロセスにおける極々購買に近い部分だけを見ているに過ぎないのに「検索連動型広告は(広告)効果が高い」なんて非常にナンセンス。実際には、そこにいたるまでに様々な情報プロセスを得て“購買”に至るわけであって、たまたま“検索されやすい”商品、つまり事前に情報収集が必要なタイプの商品、に向いていて、しかもそれらの商品は従来の広告が不得意としていた部分。だから「検索連動型広告」は(それらから見ると)“うまく”行ってるのであって、実際には、コモディティ型の商品の広告には(一般的には)不向きだ、と言われているわけだ。
※とにかく、広告やマーケティング及び消費者の購買プロセス全体を見渡す必要が、検索連動型広告従事者、CPAを追いかけているネット広告従事者たちにはある。これをしなければ数年後、ネット広告業界は大量に発生したイナゴの大群が畑を食い荒らすのと同じ状況になるだろう。
さて、そこで検索連動型広告の可能性を歪曲しないためにも、この記事をぜひ読まれたし。
■Top Spots in Search and Paid Listings Prove Key for Branding
Google + 調査会社 Enquiro による、検索結果/検索連動型広告とブランディングの相関関係に関する調査結果である。
おそらくそうだろう、と思われてきたことが"調査"として証明された、というわけ。
(とはいえ、第三者的かというとそうではないが)
eye-tracking はweb UI の業界ではめずらしくない手法だが、通常はユーザーインターフェース調査、heat spot(heat map)(よく見られているところの確認)に使われることが多く、これを用いることでweb上の広告とブランディングとの相関関係が計れるだろうと言われてきた。
※ちなみに文中にある "affinity" はブランド論の中で出てくる言葉で、「ブランドとの親和性」を指す。ブランド認知 brand awareness、ブランド連想 brand association、ブランド好意度 brand familiarity、 などとはまた別の概念で、ブランドとの"距離感"に近い概念。(※ ブランド想起 brand recall、助成ブランド想起 aided brand recall)
(記事を抄訳すると)
検索結果及び検索連動型広告にブランド名(※つまり企業名商品名関わらず)が現れることと、消費者のブランド親和性、ブランド想起、購入意向につながる。
ホンダのキャンペーン("燃費"訴求)の場合、購入プロセスの初期段階にいる消費者を対象にした調査によると、
* 検索結果及び検索連動型広告の最上位に「ホンダ」(という言葉)を見たオンライン消費者の16%が、「ホンダ車はエンジン効率がいい」と考えるようになった。
* 42%の消費者が、通常の検索結果だけ、よりも、広告スペースと通常の検索結果の両方に社名が出たほうが、ブランド想起をしやすいとしている。
* 広告掲載と検索連動型広告がともに最上位の場合、ホンダ車の購入意向は8%上昇し、それらのページに出なかった多社の場合、購入意向が16%も減少している。
ということらしい。
さて、“検索連動型広告中毒”の皆さん。
あなたたちのやっていることが、企業のマーケティングの“どの部分”に貢献しているのかぜひ再確認してみてください。もしそれが「購買直前」だけだとしたら、あなたがやっていることは、極々一部に過ぎないのです。言い換えれば、あなたたちの知識がブランディングの世界に新しい波を起こすことができるかもしれないわけです。
Stand up !
はじめまして。
ちょっと前までSEMコンサルやっていた者です。
もともとマスメディアにいたものでしたので、
検索連動型広告に、ずっと閉塞感を感じながら
今日までに至っています。
よくある、SEMコンサルのコンサルティングの話で、
「ROIを改善するためにCPAを引き下げることです。だからBigワードを使うのは辞めましょう」とか、
「社名ワードでとれてCPAが改善されました」
なんて、自信満々に言っているSEMコンサルや営業の感覚に、ずっと違和感を覚え続けていました。
違和感を調整すべく、少し強引ではあったのですが、
「CPAを壊せ!」ということを約2年間声高に言ってきました。
タカヒロさんのブログのおかげもあり、
この半年ぐらいで少しずつ溶解してきたのですが、
根の深いカビと同じく、表面的にとれただけで、
とてもとても根深く「CPA」の議論から抜け出すことができないでいます。
きっとネット広告の価値が「計測できる」そして、
「費用対効果が高い」という計数的な話でしか、
価値を伝えることができないレベルであることと、
この「数字」というのが、計測が弱いマスメディアへのアンチテーゼなんだろうということまで、何となく理解しています。
だからこそ、ネット専業の人たちが頑張ってこれたんだろうという反骨精神は、素直に素晴しいと思うのですが、
本当の意味で「広告」としての質が変わるには
相当ショッキングなことがないと無理なのでは?と少し諦めモードに入りつつあります。
自分の仕事が、もっともっと面白くて、
世にインパクトを与えているという次元に引き上げたいので、あぁーだこぉーだと吠えているのですが、
その分、組織からは空回りしています。
どうすれば、いいものでしょうか?
いきなり支離滅裂な相談めいた書き込みになってしまいましたが、
アドバイスいただくと幸いです。
悩める元SEMコンサル
投稿情報: morikawa | 2008年8 月15日 (金) 02:39
完全に同感です。
検索連動型広告のインプレッション効果について
真剣に見直すべきだと思います。
投稿情報: chikata | 2010年2 月16日 (火) 02:25
『ネット広告業界は大量に発生したイナゴの大群が畑を食い荒らすのと同じ状況になるだろう』
おもしろいですね(笑)
企業マーケの担当者に対してこの様な考え方を知らしめる為に、今後はより一層に広告代理店の役割が問われますね。
投稿情報: Advertisation | 2010年2 月16日 (火) 02:25