色々仕事をしていくうちに、ネット系広告代理店の人々はなぜ「獲得系」しか理解できないか、ようやく一つの答えが出た。
それは、取引のある広告主がいわゆる「コンバージョン系」「獲得系」の広告主だったり、そういう部署だったりするから(場合によっては広告費じゃなく販促費だったりする)。
なので、ネット系広告代理店に渡される予算が結局は、
(一人当たりの獲得コスト)x(人数)=広告費
となっており、
一方、普通の広告費は、
(目標売上)ー{(各種コスト)+(利益)}=広告費
として算出されてるのであって、こうした広告主においては、「広告費」というコストにおいて、認知や理解なども含めて複数の目標項目をいかにアップさせるのかが課題になる。
別の言い方をすれば、「売上」に対しての「広告費」の使い方がいろんな側面を含むということにもなるだろう。
“獲得系”と言われる広告主(や広告プラン)は、ネットでビジネスが完結したり、資料請求が重要な販売チャネルな広告主、である。つまり、広告の役割は「販売チャネル」なのであって、複雑な広告の役割を担うことはない。結果として、「獲得人数」によって構成される広告費しかいただけない、のである。
これを簡単な図にしてみたのがこちら。
Slide 1は“普通”の広告予算の出方で、簡単に感覚的に言えば、目標売上からいろんなものを差っ引いたものから広告費が出ているようなイメージ(実際には広告費はコストなので、積み上げられて計算されるのだが、獲得系と比較のため敢えてこのように表現させていただく)。
Slide 2は“獲得系”の広告予算の出方。一人当たりいくら、の積み上げである。この場合,一人当たりでいくらの売上目指すかが密接に結びつく。ある意味、広告という概念が拡張されたものではあるが、実際には「バーチャル営業マン=ネット広告」。
わかるかな。。。
なので、Slide 1に示すような広告費に「獲得単価はいくらぐらいですか?」と聞くのは変だし、むしろ上記したような「広告に求められるような複雑な役割」を意識し、それらの中でとれる指標/データは何か、あるいは、何をとればいいか、について考えなければならない。
ネット系広告代理店の営業マンたちのもっとも良くない側面は、「数字が計測できる媒体」しか売れないことであり、それをもって「効果が測定できる媒体」や「効果の出やすい媒体」と誤解しがちなところである。昔、ネット広告代理店の黎明期に、「テレビは効果が取れませんけど、ネットは効果が取れる媒体なので、効果的です」といって売り歩いた弊害がここに来て、自分たちの首を絞めている。
不況下に入ると、合理化を進める企業が広告費を絞るのは利益を出すために当然のことだ。しかし、この「合理化」の傾向が強いのは、検索連動型広告などを多用している広告主に多いのではないか。もしこの仮説が正しいのであれば、ブランド広告主以上に獲得を重視する広告主は予算を縮小する可能性も高い。一方ブランド広告主は予算が縮小されたとはいえ、それは財布の中に入ってる札束の数が減っただけであって、マーケティングの予算は、ある。ただ、大きな買い物ができなくなったってことだ。だから、ブランド広告主が、“獲得系”以外の領域で、ネットを活用したいというニーズが出てくるのも明らかなことであって、予算を狙うのであればここじゃないかと思う。そのためにも、広告費の出方について理解をしておくことは、まず第一歩として重要だろう。
※ちなみにスライドの絵は相当単純化してあります。
計算式はそういう感じだと思いますが、実際問題として
>しかし、この「合理化」の傾向が強いのは、
>検索連動型広告などを多用している広告主に
>多いのではないか。もしこの仮説が正しいのであれば
仮説も何も、実績として逆です。あまりにあれなので学生さんかと思ったら違いますよね。マスメディア業界の方ですか?ネット広告ではこの構造は常識なので。
獲得系広告のコストは利益が比例するので利益に比例しないブランディング広告のコストと比べて絞る理由になりません。これを背景として不況時はブランディングオンリーのTVより、Googleが強いと言われているわけでもあり。なにか論旨を勘違いしていたらすいません。
投稿情報: tosbos | 2009年3 月28日 (土) 21:28
>tosbos様
プロフィールをお知りになりたいのであれば、
http://sukedachi.jp/Profile.html
こちらをどうぞ。
次に、
>仮説も何も、実績として逆です。(以下略)
ここしばらくの業績および今後の展望について、そろそろネット系広告代理店から出てくるころでしょう。もし獲得系広告が不況に強いのであれば、これら代理店の業績に大きな影響はないはず。もしその逆が起こっていれば? これまでの「実績」に基づく「常識」が崩れるということになります。
さて、もし不況時にGoogleが強い、のであれば200人ものレイオフを「営業・マーケティング」セクションで行わなければならなかったのでしょうか?
獲得系広告にチャネルを頼らざるを得ない広告主のビジネス構造を考えれば、なぜこのこれまで信じられた構造と「逆」が起こりうるのか、見えてくると思います。
ぜひ考えてみていただきたく。そして、今後出てくるであろう各種情報を見逃さないでいただきたく。
投稿情報: タカヒロノリヒコ | 2009年3 月29日 (日) 02:00
ネット広告はバーチャル営業マンである。という看破は見事だと思います。で、その本質をきっちり理解して、さらに研ぎ澄まして、クライアントサービスするネット広告代理店は覇権を握るかもしれません。まあ、ネット広告代理業で覇権を握ってもごまめの歯ぎしりなのですが。。。
投稿情報: zosojh | 2009年3 月29日 (日) 15:53
>zosojh様
「ネット広告はバーチャル営業マンである。」ですが、特に検索連動型広告は、「三河屋」営業だというのは他の人もいってる話で、傾向は強いです。ただ「成果報酬型」とかCPCやCPAが気にされるネット広告についてはやっぱりバーチャル営業マン、でしょう。
ただですね、僕自身は「ネット広告=バーチャル営業マン」にしたくはないわけですよ。もちろん、その役割も含む、のは当然ですが。
例えば、DELLを始めとする通販を行うPCブランドは、新聞広告で自社製品を販売してますが、あの場合は“新聞広告をバーチャル営業マン”として使ってるといえると思うんですよ。実際“チャネル”として使ってるわけだし。
なので、あらゆる媒体はその媒体自身が持つ特性はあるものの、その媒体をどう使うか決めるのは、広告マンであり、広告主であるのであり、だからこそ、「この媒体はこういう媒体である」と決めつけてしまうよりも、「この媒体をどう使ってやろうか」という“媒体いじり”の感覚が大事なんだと思うんですよね。
なので、「ネット=バーチャル営業マン」ってのは、現在のネット広告が置かれているある種の“悲劇”を表したいと思って書いた表現です。
僕自身は、リッチメディアが出てきたころやそれ以前から、代理店の人間として、媒体社やメディアレップの人々と、「バナーのブランディング効果」や広告主にとって使いやすい/ユーザーに楽しんでもらいやすい「広告表現やツール」のプロジェクトに参加してきました。それからすると、今のネット広告は片方に偏りすぎていてるのが非常にネットのポテンシャルを矮小化してしまっているのと、またネット系広告代理店に勤める若者の中で、非常に素質のいい、広告に熱い人材がいるにも関わらず、彼らがCPAに塗れたネット広告に疲弊し、かつ、もっと色々やれるという夢を抱いて(彼らの言葉でいう)総合系広告代理店へネット系広告代理店から転職する、という自体が多発しているのを危惧しているわけです。
だって、ネット系ってもっと楽しくて未来なはずなのに、そこで優秀な人材が流出してるのって健全じゃないじゃないですか。
まぁそういったこととかがあって、一連のエントリーが形成されてたりするわけなんですが、先に生まれて、先に業界に入って、期せずして、2つの広告代理店とネット広告の事業者を経験したものとして、檄をとばしたいわけですよ。
投稿情報: タカヒロノリヒコ | 2009年3 月29日 (日) 17:04
非常に勉強になります。
まさしくそのとおりだと思います。
すべては消費者の購買動機を引き出すストーリーを
構築することが出来るか。
広告業界にいる自分の視点で言えば、
ここまでインターネットがマス化している中、
ネット/マス関係なく、
広告を生業にしている人、
すべてにそのストーリーを考えるチャンスがある。
この荒波を乗りこなす楽しみ。
今年1年、荒波に飲み込まれることなく、
少しでも消費者/広告主のためになる仕事を
手がけていければと思います。
失礼します。
投稿情報: gonstar | 2009年3 月29日 (日) 18:27
前職でネットマーケティングを担当していましたが、
>(目標売上)ー{(各種コスト)+(利益)}=広告費
という意識はあまりなく、
確かに純粋に「獲得単価」を意識していたと思います。
漠然と意識していたことが、この記事で整理できた気がします。ありがとうございます。
投稿情報: さかずき。 | 2009年4 月 8日 (水) 19:10